エレベータの安全装置

うちのエレベータは、小さな地震でも止まってしまう。近くの古いマンションはそのまま動いているのに…という意見について

エレベータは、人を安全に運搬する役割から、非常に細かく、かつ安全に作動するように、法律上も、技術上も、いろいろな安全装置が搭載されています。

今回は、地震でよく止まるエレベータについて、解説します。

地震に関連する安全装置として、地震時管制運転装置があります。これは、主に2つの機能が備わっています。
① P波センサー(初期微動)
② S波センサー
 
新しいエレベータには、両方搭載されており、地震に関して二重に監視していると言えます。

機能としては、P波センサーは、エレベータピットの底に設置され、いわゆる人が感じない初期微動を感知し、事前にエレベータを安全な位置で止めるという装置です。

初期微動を感知したが、本震が来ない場合には、自動で復旧します。

初期微動を感知し、首都直下地震等は、ほとんど同時に本震が来ることがありますが、プレート型や海溝型等は、遅れて本震が来ます。本震を感知するのが、エレベータ機械室(機械室レスの場合には、エレベータ昇降路最上部)に設置され、物理的な揺れについて関知して、エレベータを安全な位置に止めて安全を確保します。

ガルという地震のエネルギーで感知するため、震度に直すと震度4の強めから、震度5弱程度で作動することとなります。そのため、新しいマンションで、高層の場合には関知しやすいことも多いでしょう。

逆に、古いマンションの場合には、こういった最新の安全装置がないこともありますから、地震が来ても、S波センサーのみで本震と同時に安全装置が働く、物理的に故障していない(レール等が曲がっていない)限り稼働する、場合によっては閉じ込められるという危険性も大いにあり得ます。

つまり、新しいマンションでは比較的小さな地震でも安全装置が働くため、止まりやすく、古いマンションでは安全装置の機能が少ないあるいは安全装置が搭載されていない等で止まりにくい、ということです。

普段から止まりやすいから安全なのか、閉じ込めの危険があるけど動いていることが安全(便利?)なのか、個人的には意見のわかれるところですが、新しいエレベータは、過去の様々な人身事故や閉じ込め事故に対応してその都度設置が義務付けられた経緯がありますので、日常使用される方にとっては、安心そのものでしょう。

(マンション管理士/戸部素尚)

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