マンションは常に営業されている ~匿名の文書に対応しない理由~

実際にあった、匿名の文書に見せかけた営業チラシ

 ある日、顧問先マンションにこんな文書が投函されました。
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理事会役員の皆様へ

いつも、マンションのために活動していただきありがとうございます。

知人から聞いてびっくりしたのでこのメモを書きました。
このチラシは私の知人で分譲マンションの理事長をしている人からもらいました。
うちのマンションの管理会社は知っているのでしょうか?
知人のマンションは、滞納が激減して管理組合運営のお金が安定しているようです。
工事計画も順調に進み始めているとのことです。
管理会社に知っているか聞いてみてください。
払っていない人の分を管理会社が100パーセント解決して回収してくれると書面で約束をしてくれるのであれば必要ないと思います。
あまり興味が有りませんでしたが私が払っている管理費が無駄な使われかたをしているのかと思うと不公平感や憤りを感じます。
それと裁判をおこすにしても理事長個人名で訴訟するのは、今のご時勢、逆恨みされる可能性があります。もし自分の名前で近所の人を訴えるなんて考えただけでも怖いです。やっぱり役員には絶対になりたくないです。

匿名希望
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これにクリップで、「管理費インシュア株式会社」(今現在検索しても出てきません、倒産したんでしょうか)のチラシが同封されていました。

みなさんはこれを読んでどうお感じになるでしょうか・・・

管理員さんが、管理組合ポストに入っていましたと理事会に提出されましたが、管理員さんもこれは営業チラシの一つだと思いますよ、との一言に加え、私もおかしな点が4つありますと答えました。
 
 ①管理組合名がない …うちのマンション、という言い方しかしていませんが、そのマンションは、むしろみなさん、「住宅」という呼び方をしています。

 ②滞納と、管理費の無駄な支出とは全く関係がない …むしろ、督促や裁判費用、弁護士費用等が滞納によって発生する、ということをわかっていての発言とすれば、「知人から聞いてびっくり」するような、知識のない方ではなく、よくご存知の方なのでは。

 ③裁判を、管理組合名という団体ではなく、理事長名で起こすことを知っている …普通の人は、管理組合が権利能力なき社団であり、訴訟における原告適格は、理事長等訴訟追行する者を選任しなければならない、というルールなんて知りません。。。
  それを、理事長「個人」名で訴訟するなんていう言葉を使っているあたり、法律に舵っている方でなければ書きません。

 ④文章を読んでも、何が言いたいのかわからない  …本当の居住者であれば、この会社に問い合わせてみてくださいとか、一度話を聞いてみて、導入してみてはどうかというアドバイス的なことが多いかと思います。結論が、「役員は怖いですね、やりたくないですね」だとすると、本当に意味の分からない文章です。きっと、営業チラシに見せかけないようにする、という点を重視しすぎて、逆に不自然な文章になったと推測されます

実際、私のかかわる他のマンションでも、同社と同じような内容・方法とで投函されたため、完全に居住者意見にみせかけた営業チラシだと判明しました。

このように、匿名の意見書や要望書は、その内容がどれだけ重大であっても回答ができないですし、発言に責任を持たない(持ちたくない)方に対する理事会の責任とのバランスを考慮して、私自身は、確認はするものの、対応しない方がいいとアドバイスしています。

 以上の事例のほかにも、管理会社を変えようとするときに、匿名の文書がまかれる、大規模修繕の工事会社が決まったと思ったら、その会社に関するネガティブ情報がまかれる等、結構悪質な事例はあります。
 
 理事会運営については、常に情報の取捨選択には気を付けたいものです。

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