総会の出席票・委任状・議決権行使書(1/2)

総会において、多くの管理組合では、「出席票」「委任状」「議決権行使書」の三つあるいは「出席票」「委任状」の二つを活用されているかと思います。

ここでは、現場で委任状等の取り扱いについて悩んださまざまなケースをご紹介します。

その1 管理規約で「議長は、総会で選任する」と記載されていて、委任状の受任者欄が空欄の場合には「議長に一任する」としているケース

都市公団関連マンションの管理規約には、このような条文が記載されているケースが多くあります。標準管理規約では、原則として「理事長が議長となる」と定めているので良いのですが、このケースのように「総会で議長が選任される」となると、いったい誰が議長になるのかが見当がつきません。それなのに、事前に「ミスターXに委任します」というおかしな話になります。

私自身も、これでは委任契約が成り立たないので無効では・・・と思いますが、委任状を認めないと総会が成立しないのと、こうしたケースのマンションでは慣習になっているので、「まあいいか」ということで片目をつぶっています。

では、この場合の委任契約とはいったい何なのかを確認してみましょう。委任契約は、次のように類型できます。

①労務供給契約…仕事をさせる契約
②諾成契約…書面を必要とせず、口頭でのよろしく!わかった!で成立する契約
③(基本的には)片務契約…任された方だけが義務を負う契約
④無償契約…お金が動かない契約

そして、委任契約は、基本的には「あなたに任せる」というのが趣旨です。民法の規定をみると、復代理人を定める場合には委任者の許可が必要とか、受任者(委任者)が死亡したら契約は終了という、極めて属人的な形態が委任であることがわかります。

このような、「あなたに任せたい!」という意思が強い委任契約では、「誰でもいいや」という白紙委任は成り立たず、いわゆる無効となります。民法上「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」という規定があり、相手の特定と承諾が必要なのです。

ですから、総会の場で議長を選任する場合には、委任の相手先が決まっていないので、自分の意見と一緒なのか違うのかさえも分かりませんから、さすがに有効とはいえないのでは・・・と思ってしまいます。

しかし、管理組合という集団は、共有財産を一緒に管理している団体ですから、どんな人が住んでいるとかどんな考え方かというのは「一応」分かっているとも考えられます。例えば、みんながお金を出し合って、一つの物を買った場合等には、共有者の意識は一つだと言えるわけです(マンションも建前上、この理論。)この前提でいえば、「この中のメンバーはそんな人はいないから、誰でもいいよ」という趣旨を踏まえた委任なら、有効と取り扱えるケースもあるかなと思います。もちろん、法律上はそんなことはありませんが、無理やり理論づけしたらの話です。持論としては、法律よりも管理組合運営の円滑化がポイントと考えています。。

したがって、このケースでは、委任状に「白紙の場合には、議長に一任することとします。ただし、議長は総会に出席した組合員の中から選任されますので、その選任された議長に一任することを承諾します」と記載するようにしましょう。

その2 出欠票、委任状、議決権行使書のすべてに記載されているケース

よくあるケースで、「いずれか記入してください」と書いてあってもよく読まず、全部に記載してしまう方がいます。この場合には、出席したら出席票、欠席したら議決権行使書、委任状の順で取り扱うのが望ましいといえます。この取り扱いで悩むことは少ないと思われます。

その3 委任された人が欠席し、議決権行使書を提出しているケース

委任された人が欠席してしまった場合は、委任状の委任項目に記載されている内容に基づいて取り扱います。

委任の本旨は、「総会に出席し、議決権を行使すること」とする場合が多く、このケースでは出席していませんから、委任状は無効となってしまいます。出席カウントも難しいでしょう。

したがって、委任状の委任項目に「総会に出席し、議決権を行使すること(書面による議決権行使を含む)」と記載することで有効とすることができます。

その4 委任された人が欠席し、委任状を提出しているケース

これもよくあることです。委任された人は、委任されたことを認識していないことが多く、欠席したうえ議決権行使書ではなく委任状を提出してしまったケースです。

この場合には、民法上の復代理となり、本人の許可が必要になります。「あなたに任せたい」という意思が、そのまま「あなた」が任せた誰かにさらに「任せる」ことにはならず、基本的には無効となります。

したがって、委任状の注記に「代理人が欠席した場合には、議長委任とさせていただきますので、代理人が出席することを確認してからご記入ください」と記載するようにしましょう。

その5 受任者の名前が読めない、受任者が存在しないケース

一番困るケースです。この場合には、書いた方に問い合わせるしかありません。「この方はいませんよ」とか「存在しないのですが」といった形で質問し書き直させることで、本人の意思が明確になりますので、なるべくそうしましょう。

なお、委任状に「受任者欄が空欄の場合のほか、判読不可、代理人が存在しない場合には議長委任と取り扱います」と記載することでも、無理やりですが対応できるものと考えています。本人の意思とは無関係になりますので、問題になりやすいことは承知していますが・・・。

その6 受任者が(管理規約上、総会に代理人として出席できない)無権利者であるケース

これもままあることで、例えば管理規約では「総会の議決権行使は、組合員と同居の配偶者」とされているのに、お子さんを代理人として指定したようなケースです。

管理規約に従えば、代理人として取り扱えない人が出席している以上、さすがに認めるわけにはいきませんから、これは無効として取り扱わざるを得ません。

したがって、委任状の注記には「適法な代理人を選任ください」と記載し、その属性を明確にさせるべきでしょう。

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