区分所有者が死亡し、相続が発生した場合に、管理費・修繕積立金・駐車場使用料等の回収はどのようにしたらよいか。

・・・相続が発生すると、管理費等が滞納してしまうことが多くあります。その問題の根源はなんなのでしょうか。
本来は標準管理規約にあるとおり「組合員が変更したら、組合員変更届を提出すること」になっています。しかし、区分所有者であれば、その旨は承知していると思いますが、相続人がマンション住まいでなかった場合、このような届けがあることさえも知らないということが多くあります。これが原因の一つです。

また、相続人が複数いる場合には、共同相続をすることになります。つまり共有名義になるということです(細かく言うと、物権共有ではなく遺産共有。遺産共有は、遺産分割協議で変更の可能性がある浮動的な共有と思ってください。)。共有名義である以上は、管理組合に対して議決権行使に関する届出をする必要があります。でも、標準管理規約には管理費の支払いに関しての届出の規定はないのです。また、民法上、遺産共有は、連帯債務ではなく、分割債務ですので、例えば相続人2人が10,000円の管理費を負担するとしたら、1人5,000円を支払えば債務はなくなるということです。参考までに連帯債務の場合には、1人が10,000円を支払う義務があるので、1人が10,000円を支払ったらあとは2人で協議して求償しあってください、という債務です。
管理組合の立場から言えば、突然債務者が複数人になり、しかも住所も名前も解らない人になるわけです。誰か1人の連絡先を知っていれば良いのではなく、相続人全員の住所、氏名を知らなければなりません。口座引落しの場合には、さらに口座振替手続きも必要ですから理事会、管理会社の仕事もぐっと増えます。

一般的には、あの部屋が相続になりました、じゃあ相続人から連絡を待ちましょう、という形でしばらく放っておいて連絡を待ちます。でも、中には遺産分割がまとまらず、ずっと係争中というものもあります。管理組合活動は、管理費がないと運営できませんから、管理が止まってしまったら資産価値も維持できなくなります。つまり、止めることができない活動なのです。にもかかわらず、必ず相続に関して規約に何らの設定もしていないのでは、活動が止まった時には時すでに遅しということになってしまいます。
ポイントは、連帯債務にすること、相続が発生した場合には管理費等支払いと議決権行使書に関する代表者の届出をしてもらうことです。また、管理費・修繕積立金と、駐車場使用料とは性質を異にしますので、届出は二通必要となります。

PAGETOP